より良い人生にするために非認知能力を育てる

2021.05.28

日本の高校生たちが世界で活躍している人々のように、多様な人々と協力しながら、データを使いこなして前向きに考えられるようになってほしいと考えているのですが、確立された教育方法がありません。そのため、TEDxTokyoの共同創立者のPatrick氏と、社会的情緒的学習(SEL)を研究しているアメリカイリノイ大学のDr. Kimberly Schonert-Reichlと議論しながら授業をデザインしています。博士がいらっしゃるシカゴと日本とでは時差が15時間あるため、リアルタイムに話をすることは大変難しいのですが、日本の子供たちのためにと夜に時間をとって助言して下さっています。

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生徒たちの非認知能力の調査について相談した時のZOOM画面。

博士は、社会的情緒的な学習(SEL:Social Emotional Learning)の研究で世界的に有名な応用発達心理学者です。共感、思いやり、利他的な行動、レジリエンスなど、人が幸せに生きていく上で重要な能力を育てる研究がご専門で、2009年のバンクーバー平和サミットでは、ダライラマとSELについて対話しました。博士は子供たちの社会的、情緒的な状態を把握するための調査手法を開発して世界10カ国以上で調査を実施し、世界的に注目されています。調査項目は101問あるのですが、中には以下のような内容の質問があり、生き方について深く考える機会を与えてくれます。

  • 自分の性別をどのように表現しますか?

  • いじめられている人を助けましたか?

  • この世界をより良い場所にしようとしていますか?

  • 世界を変えることができると信じていますか?

  • もし人生をやり直せるなら、同じようにしたいと思いますか?

 

この調査はまだ日本では実施されたことがないため日本語に翻訳して、STEAM授業の中で調査を実施しました。回答者が特定できない形で調査結果を生徒たちと共有したところ、生徒たちはデータを見ることによって多くのことを考えました。以下に一部をご紹介します。

  • 自分のクラスにはいじめはないと思っていたけれども、データを見たら、いじめられたと感じている人がいることがわかった。いじめられたと感じる人をゼロにしたい。

  • 質問に答えた結果、自分のことに関してはよく分かった。他人のことを考えるとなるとまだ出来ていない、そのため他者のこともよく考え、気がつける人間になりたい。

世界で活躍している人々と同じように、データを見ながら自分たちの未来をデザインする習慣を身につけてくれればと思います。

 

この記事を書いたメンバー
今井 朝子
今井 朝子
(株)日立製作所にて研究開発に従事した後、アメリカの企業にて東京大学とイリノイ大学とのVRの国際研究プロジェクトに参加し、アプリケーション開発に従事。その後ユーザビリティーやフィールド調査に関するフリーランサーとして多数企業の新規事業提案等に携わる。現在、総務省情報通信審議会専門委員、OECD SSES National Project Manager、Salzburg Global Seminar Fellow、群馬県非認知教育専門家委員会委員、SEL Japan 運営メンバー、SEE Learning Japan運営メンバーを兼務。

<経歴>
・慶應義塾大学理工学部卒業
・慶應義塾大学大学院理工学研究科物理学専攻 修士課程修了
・イリノイ大学コンピュータサイエンス科 修士課程修了
・東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了